iPadによって頻繁に耳にする言葉となった「電子出版」ですが、まだ創成期と言うこともありその動向は混沌としています。
残念ながら、テレビ同様に閉鎖的な国内の出版業界では既報の通り複数の企業がオープンという名の「日の丸規格」に奔走し電子出版の新会社を設立しようとしていますが、それはiPad=Appleに主導権を握られたくない事の裏返しでもあります。
オープンとは言いつつも互換性のない、いわば独自規格で対抗しようという流れは、その大義としては文化を守るとか抽象的で支持を得やすいのですが、実際にはAppleなどの新規参入に脅威を感じて既得権を保護するだけの隠れ蓑になってしまうと言うことは往々にしてありますので、それほど大きな期待は出来ないでしょう。
オープンなプラットフォームはすでにWebというスタンダードがあるわけで、それはiPadでも見られるような物でなければそれをオープンとは言えないでしょう。
重要なのはコンテンツであり、ユーザーにとっては読めることであり、コンテンツホルダーにとってはコンテンツを消費させることであり、規格の独自性はさほど重要ではない。
iPad以前にiPadが作れたら規格を握るのは重要なのかもしれませんが、iPad以後となってはその潮流に乗る方が遙かに合理的な選択に思います。

ただしこうした既得権側の警戒感の裏には、Appleの姿勢は(出版業界にとって)幾分問題があるのかもしれません。
iTunesで楽曲を流通させる場合のフィーは50%と言われています。
iBooksでも30%と言われています。
売値は販売者が決めることが出来ますが、この料率がただでさえ腰の重い出版業界を頑なにさせているようにも思います。


以前、前述の企業に含まれる印刷関係者と電子出版について話をしたことがありますが、iPadは速攻で予約したそうです。
やはり脅威と感じている様子でしたが、実物の印刷が電子化されることについては割と肯定的な考えを持っているようで、ビジネスチャンスとして捉えていたことが印象的でした。
新会社設立以前に交わしたやりとりでしたので、おそらくWebというプラットフォームをベースに考えていたのではないかと思われます。

また、日本でいち早くiPadに対応したアゴラ出版はオープンなAjaxリーダーでコンテンツを提供していたように、iBooks以外での流通も可能であることを考えると、プラットフォーム争いをするよりもコンテンツホルダーが積極的に既存のプラットフォームを活用する方が、コンテンツは死蔵されずに済むのではないでしょうか。

さらに別の出版関係者と意見を交換した時、何度か電子出版の話をしたことがあるのですが、私は映像の仕事をしている当時から出版はいまのWebと言う形に最も適したコンテンツであると主張していました。
彼らも同じ認識だったようですが、やはり破壊的なまでに価格の付かないWeb上での流通が非常に難しく、採算ベースの利益確保も簡単ではないという結論しか出ませんでした。
しかし、コンテンツの制作能力やコンテンツ自体を持っていると言うことは強味であることに変わりはありません。
iPadと言うプラットフォームがあるのならば、それを活用するのが最も賢い選択ではないかと思います。

※補足
AppleのiBooksでの30%のフィーが高いのか安いのかは何とも言い難いのですが、一般的な書籍の場合版元が70%ぐらい持っていって販売書店が10%程度、取次が10%程度、印税が10%程度となっています。
取次はつまり卸のことなのですが、出版業界はこの取次が強い影響力を持つという特殊な環境があります。
著作者の印税と同じぐらいですね。
iBooksでは販売・流通に30%かかることになりますが、権利者が販売するなら残りの70%がまるまる利益となるので、著作者にとっては30%のフィーはとても安い。
しかし、既得権側にしてみるとまず取次は中抜きになってしまいます。
電子出版は文字通りデータでの出版なので、版元は印刷費など製作原価が限りなく低く済ませることができ、著作者にとってのフィーも大きくなるのでAppleのiBooksはコンテンツホルダー、コンテンツプロバイダには悪い話ではないのです。
Updated@2010-08-30-23:57

9 Responses to “Apple、iPad、電子出版 -Update1”

  1. ApplePeople より:


    Apple、iPad、電子出版 http://ff.im/-pU8jp

  2. carnation より:


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  3. Yuichi Abe より:


    Apple、iPad、電子出版 http://ff.im/-pUcJb


  4. ipad・ せからしか.com » Apple、iPad、電子出版: 以前、前述の企業に含まれる印刷関係者と電子出版について話をしたことがありますが、iPadは速攻で予約したそうです。 やはり脅威と感じている様子でしたが、実物の… http://bit.ly/agRqns

  5. DAJ-RSS より:


    Apple、iPad、電子出版:

    iPadによって頻繁に耳にする言葉となった「電子出版」ですが、まだ創成期と言うこともありその動向は混沌としています。
    残念ながら、テレビ同様に閉鎖的な国内の出版業界では既報の通… http://bit.ly/964IOl

  6. dajhirokirss より:


    Apple、iPad、電子出版:

    iPadによって頻繁に耳にする言葉となった「電子出版」ですが、まだ創成期と言うこともありその動向は混沌としています。
    残念ながら、テレビ同様に閉鎖的な国内の出版業界では既報の通… http://bit.ly/964IOl

  7. Digi-KEN より:


    せからしか.com » Apple、iPad、電子出版: せからしか.com Blog,Appleな話題を経済、ビジネス、テクノロジーと色んな切り口でお伝えするせからしいBlog. http://bit.ly/964IOl

  8. R_atmark より:


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  9. keysfeed より:


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