【新型、登場】
昨夜のAppleのイベントは、Appleによるストリーミング中継もあってWeb上でも大変な盛り上がりを見せています。
個人的に注目していたiTVと目されていた新型Apple TVは、クラウドサービスをベースとした映像コンテンツのIP配信のためのSTBでした。
期待や妄想とは裏腹に、付加機能を追加・刷新するのではなく、従来の機能をそぎ落としよりシンプルに再設計されたApple TVでした。
それはインターフェイスの少なさが物語っています。
ストリーミングを見ながら注目する点はいくつか想定していましたが、新型Apple TVの概要が分かった後の興味は専ら「どの地域でサービスが提供されるのか」でした。
【なぜいつも日本は…】
案の定、予想通りでしたが日本はサービス提供6カ国の中に入っていませんでした。
これはだいたい想定できました。
過去のサービスを振り返ると、日本ではiTunesのサービスは中々始まらなかった事実があります。(これについてはAppleのiTVサービスに秘められた可能性で書いたのでここでは割愛します)
今回、Apple TVのクラウドサービスも同様に難しいでしょうね。
そもそも日本では現行のApple TVも鳴かず飛ばずの状況で、認知もあまり広くはありません。
Apple Store Shibuyaではいつからかは忘れましたが、ずいぶん前にApple TVのデモは置かなくなりました。
それだけ販売に力を入れられないということでしょうか。
【横たわる著作権問題】
日本は閉鎖的だと言われますが、では一体何が閉鎖的なのでしょうか?
やみくもに閉鎖しているわけではなくそこには根深い問題が横たわっています。
日本においては著作権に関する問題は、著作権者とは独立して一人歩きしている感があります。
少々難しい表現になってしまいがちですが、簡潔に書くならば著作権が既得権化しているため多くの利権が複雑に絡んでいるのです。
著作隣接権というちょっと複雑で風変わりな概念が、日本の映像コンテンツを死蔵化しているといっても過言ではないでしょう。
例えばNHKアーカイブスなどはNHKが保有する映像コンテンツの1%にも満たない映像しか公開されていません。
その理由は著作権と著作隣接権によるもので、NHKは映像に出演する全ての人の肖像権まで確認をとっているので既に亡くなった人の出演したドキュメンタリーなどは公開できないのだそうです。
また、タレントの出演する多くの番組も許諾関係が複雑であることから中々販売にこぎ着けないという事情もあります。
さらに、使用楽曲の許諾も何かと評判の悪いJASRACが管理しており、販売に際してはそれなりの許諾料が発生してしまいます。
そして問題はこれらが著作権者に適切に渡っているかどうかなど、委任料や手数料など別の問題にも発展していきます。
ここでは書ききれないほど複雑な問題がそこには横たわっているのです。
【Apple TV最大のボトルネックとiBooksの前例】
Apple TVが日本でサービスもままならない理由は、既得権としての権利関係や放送局との利害関係もありそのことが最大のボトルネックとなっています。
本来的にはコンテンツは流通して初めて消費されそこには利益が発生するはずなのですが、そのための仕組みや制度は古すぎて今の時代に対応できていないという問題もあります。
記憶に新しいiBooksも同様の問題があり、ちょっと変わった動きもありました。
これは以前Apple、iPad、電子出版で書いたので引用します。
国内の出版業界では既報の通り複数の企業がオープンという名の「日の丸規格」に奔走し電子出版の新会社を設立しようとしていますが、それはiPad=Appleに主導権を握られたくない事の裏返しでもあります。
オープンとは言いつつも互換性のない、いわば独自規格で対抗しようという流れは、その大義としては文化を守るとか抽象的で支持を得やすいのですが、実際にはAppleなどの新規参入に脅威を感じて既得権を保護するだけの隠れ蓑になってしまう
この既得権はつまり著作権を隠れ蓑にした既得権益ですね。
iBooksの前例ではありませんが、この著作権の問題こそが最も根深い問題と言えるでしょう。
その典型が日本では検索エンジンは著作権法違反というような、ちょっと吹き出してしまうような例でしょう。
放送をデジタル化するのも結構なことですが、こうしたApple TVのようなコンパクトな機器さえあれば映像はIPで簡単にストリーミングできるのですけどね。
【one more thing…】
Apple TVのコンパクトなボディは非常に魅力的で、Apple特有の手に取りたくなるプロダクトであることは容易に想像が付きます。
気になるのは日本に住む私たちがそれをいつ手に出来るのかと言うことですが、こればかりは制度そして既得権益の複雑な問題が絡むので難しいのかもしれないですね。
Apple TVはサービスとバンドルされたデバイスです。
ストリーミングによるレンタルサービスを実現するためのSTBなので、サービスの展開されない地域では販売する意味がありません。
もしサービスが開始されるとするならば「Jobsがone more thingで日本のサービスを発表」なんて皮肉の利いたジョークは無いのではないか、と思ってしまうほどサプライズな事かもしれませんね。
訂正
NHKアーカイブスで視聴できる番組の本数は約6000本で全体の10%ではなく1%の誤りでしたので、訂正しました。
どちらにしても少ないですね。
追記
著作隣接権は「著作物の創作者ではないが著作物の伝達する実演家など」が有する権利というのが一般的ですが、権利を拡大しすぎているとの批判も強いですね。
肖像権は著作隣接権に含まれる物ではないですが、NHKは肖像権のクリアを自主基準として設けています。
これがクリアできないとアーカイブスでは公開できないのですが、これは権利を拡大しすぎた弊害とも思えます。
ここまでくるとコンプライアンスも過剰ですね。
隣接権についてはこちらが詳しいです。興味のある方はどうぞ。
Updated@2010-09-03-13:34
興味深いコメントを頂いたので、続きを書きました。
続・新型Apple TVで浮き彫りになった事情



新型Apple TVで浮き彫りになった事情:
【新型、登場】
昨夜のAppleのイベントは、Appleによるストリーミング中継もあってWeb上でも大変な盛り上がりを見せています。
個人的に注目していたiTVと目… http://bit.ly/a9YSKX
せからしか.com » 新型Apple TVで浮き彫りになった事情: AppleなせからしいBlog,iOS,Apple,Nokia,Blackberry,Bold,Android,iPhone,ipad,Google,Mac,… http://bit.ly/a9YSKX
目の前の事情のために、都合の良いことを正義として、全体的には置き去りになる。日本的なというのは「何でも取り入れて、それをものにすること」と考えた方ががしっくりくる。 RT @jinnguji: 新型Apple TVで浮き彫りになった事情 http://bit.ly/atB0ej
新型Apple TVで浮き彫りになった事情http://bit.ly/9myTrz
[...] 新型Apple TVで浮き彫りになった事情 | せからしか.com [...]
正直、iTuneは米国を含めた英語圏の国でしか考慮していない。さらに、映像コンテンツとなれば、Hollywoodの映画会社の意向を強く受ける。いまでも、米国以外では、最新の映画は見れない。考えてみれば、当たり前でBDにまでわざわざリージョンコードを乗せたぐらいだから、まだ映画公開されていない国に、最新の映画がストリーミングされてしまうのは都合悪かろう。
ただ、最近の流れは、各国同時公開しないと、最初のアメリカの評判が悪い場合、あっという間に評判が広まってしまい、次の国での収益ががた落ちになったりしたりと、時間差公開が必ずしもプラスにならない面もあるようで、逆に英語圏は同時公開したほうが、良いと考えるようになれば、ネットストリーミングはやりやすくなるかもしれない。
ただ、英語圏以外特にアジア圏の場合、翻訳等の手間もあるので、同時公開はきついのかな?となると、日本を含めアジア圏の場合、Hollywood見たい人は素直に円盤を買えってことになるかな。
むしろ、不思議なのは、ここまでAppleを排斥しておいて、松下とNHKあたりが組んで、日本版iTuneを作って、日本のコンテンツ流通を独占して海外から金を儲けようとか言う発想がまったく生まれてこないことだ。
Youtubeの違法アップロードに関して権利侵害を云々する前に、海外の企業に流通させるのも嫌なら、自分たちでコンテンツの流通を整備する気もないというのは、たぶんコンテンツの活用の仕方を、理解できないおっさんたちが多すぎるためであろう。まさに日本にとっていまやコンテンツが豚に真珠、猫に小判状態になってしまっているのが、一番問題な気がする。
「ustream」という言葉に置き換えてみても同じかも。そしてiPadが直ぐに飽きてしまう、という根本的な理由かもしれない。 : 新型Apple TVで浮き彫りになった事情 せからしか.com http://bit.ly/a9YSKX
「オープンとは言いつつも互換性のない、いわば独自規格で対抗しようという流れは、その大義としては文化を守るとか抽象的で支持を得やすいのですが、実際にはAppleなどの新規参入に脅威を感じて既得権を保護するだけの隠れ蓑」 http://bit.ly/bfyLUX